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Yashiju sha

São Paulo / SP - Brasil
86 anos, Poetas de tanka

川上 美枝 - 移民船の思い出


私達の移民船はやっとサントス港に着いた。甲板に出て埠頭をじっと見下ろしていた。突然「ちょっとちょっと見てごらん、あの人達」と姉は横にたっている私をつついた。よく見ると真下の埠頭の倉庫の壁に寄りかかり、若い精悍そのもののような息子らしい人とその両親らしい三人の姿がじっと我々の船を見上げて立っていた。

ふと私の胸のうちに浮かんだのは先日のマダガスカル島付近を通過の際おこった事件の事であった。それは海にとびこんだ娘、その親娘を迎えに来ている人達らしいと云う人の話であった。私達はお互いに顔を見合わせ、胸せまる思いでじっとただ見下ろしていた。この投身自殺をはかった娘は私と同年配位で、年の頃は十六、七歳位で、一見色白のぽっちゃりとした顔だちで、黒々とした髪をふりふりキャッキャッと騒ぎ甲板をわがもの顔にとび歩いていたおてんば娘であった。風紀係の人達にも再三注意をされていたらしく、それが原因とかといううわさでもあった。私達一家と同じく特別三等船客で再渡航者であったことも後日の話で知ったのであった。一人になった母親をお訪ねしたが、部屋の二階のカーマで頭からすっぽりと毛布をかぶって横になり、何とも返事もないのでだまって部屋を出たのであった。

その日は我等の移民船は南米に向けのんびりと平和な航海を続けていた。いつもの様に日の明るいうちに夕食をすませた私達は部屋に休んでいた。突然船員のOさんが大きな声で私達の船室にとび込んできて、「Mちゃんはいるかね」、とOさんは蚕棚で一ぱいの船室の隅に腰かけている私の顔を見付けると「アアびっくりしたよ、よかったよかった」「どうかしたのですか?」と姉はとっぴな声を張り上げた。「今ね、若い娘さんが海にとび込んだところだ。それがね特別三等船客の娘さんなのだというのでもしかと思ってとんで来たんだ」、とOさんは胸をなでなでやれやれと云った顔で私達を見廻していたが、又とぶ様に引きかえしていってしまった。

びっくりして顔を見合わせていた私達も我にかえって、それいって見ようと我先にとポルタの外に出、見ればはや甲板に登る広い急な階段にはガタガタと走りあがる人達で一ぱい、もう夢中になって人々にまじり、あの急階段を一気にかけあがってみれば甲板にははや大勢の人々が口々に何か言いあいながら船べりにとりついてのぞく人、向こうに走って行く人、その間を縫って人々のかたまった船べりに走りより海面をのぞいて見たが、海はいつもの様にちっとも変りなく青黒い不気味な大きなうねりをみせて進み行く船にうちあたっては砕けていた。甲板は右往左往する人々で一ぱい、その人々にまじって船員達も走り廻っていた。ボートはと見ると、上のほうにつるされている。そのうち人々は口々に「船はもときた方向にもどっているらしい」と。それでも私達にはちっとも感じられない。見廻せど眼のとどくかぎり海はどこまでも青く広く小山のように盛り上がっては船に迫りきて谷のように低く下がってゆく。船べりにおし並んだ人々はそれぞれあちらこちらをゆび指して口々に何かさけんでいた。

いつのまにか太陽は水平線にかくれ、だんだんと遠目がきかなくなって来た。いよいよ日も暮れおちて、船より海面に向け大きな照明灯が下げられた。その明りに照らしだされた黒い油を流したような海面にはときどきフカの背ででもあろうか大きな黒い小山のようなものがポッカリと幾度も浮かびあがっては沈むのが見えた。人々はそのたびに息をのみ不安な顔を見合わせた。闇はいよいよ深く、その上いつしか雨も加わり、雨足は照明の明りに照らし出されチカチカと光っては黒い海に吸われるように消えてゆく。雨はつよくなったが人々はそれでもぬれる事をもいとわず、いつまでもいつまでも船べりにつかまってガヤガヤとのぞき見下ろしていた。ボートは下されるばかりに用意されていた。

ほの暗い甲板にどのくらいの時間がすぎたものか、ふと見れば雨も小降りとなった。そのうち甲板に船長をはじめ船員たちが規律正しく整列した。それをとりまく人々の静まりのなかを船の汽笛がもの悲しく、ボーボーボーと三回鳴りひびいて闇の海上に尾を引いて船は進行していった。きのうまであのように嬉々としてとび歩いていたあの娘は何故母親一人を残して逝ったのか?甲板の人影は一人へり二人へりして去って行った。

あれからもうはや半世紀は流れ過ぎた。目をつむればあの青い大海のうねりが私の胸にせまって来る。一生忘れることの出来ない若い日の出来事であった。


Enviada em: 30/07/2008 | Última modificação: 30/07/2008
 
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